「そう言えばもうすぐ節分だね」
「何その唐突な話の入り方?」
「そこはみんな分かってると思うからスルーしてよ」
「あ、はい」
「何で節分って豆をまくんだろうね?」
「邪気を祓うためじゃないの?」
「豆って当たると痛いんだよね。別に豆じゃなくてもいいじゃん」
「例えば?」
「塩とか」
「それならあまり痛くなさそうだけどちょっと違う気がする」
「よく全裸で塩を撒いて気合を入れたりするじゃん」
「全裸で気合ってどんな変態行事だよ!」
「優勝したら『私は帰ってきました!』って」
「それ豆まきじゃなくて相撲じゃねーか!」
「じゃ、マメまきじゃなくてコメまきとかは?」
「米なら小さいから撒きやすいかもね」
「ついでにブーケも投げよう」
「ライスシャワーとブーケは結婚式だろ!」
「マメじゃなくて、アメとかウメとかカメとかは?」
「語呂が似ていればいいっていう問題じゃない」
「まぁ、ゾウガメは投げるの大変だしね」
「亀ってゾウガメを投げるつもりだったのかよ!無理だろ!」
「飴も食べかけのはベトベトしてるから鬼は嫌がるだろうなぁ」
「食べかけは鬼じゃなくても嫌!」
「考えてみると鬼も可哀想だよね」
「豆をぶつけられて追い出されるんだもんね」
「というか、鬼のその後なんて悲惨だよ」
「その後?」
「家を追い出される → 行くところがない → 仕事もない → 派遣村へ行く → なけなしの金で買ったタバコを吸いながらTVのインタビューに答える → 嗜好品買える金があるじゃないかとネットで叩かれる → 派遣村を追い出される → 橋の下での生活になる → もう生きていく気力もない → 自分をこんな目に合わせたのはあの豆まきのせいだと逆恨み → 復讐を思いつく → 豆まきした人をナイフでグサリ → 人生オワタ\(^o^)/」
「ね、悲惨でしょ?」
「いまどき安い2時間ドラマでもそんなベタな展開ねーよ!」
「そうかな?」
「というか、鬼が派遣村に行くな!」
「あと、節分には恵方巻きも食べるよね」
「そういう風習もあるね」
「恵方巻きって7種類の具が入ってるの知ってる?」
「へー、あの太巻きに7種類も入ってるんだ」
「そう、で、世界中に散らばっている7種類の具材を全て集めると大きな龍が出てきて何でも願いを・・・」
「それ何てドラゴンボール?」
「豆つぶってクリリンのことかー!!!」
「いや、何も言ってないし。それ単にクリリンのことかーって言いたいだけだろ!」
「たった三匹の豆つぶがこの鬼に勝てると思ったのか?」
「豆つぶじゃなくてアリ、鬼じゃなくて恐竜ね。フリーザの台詞は」
「よくわかったね」
「つか、これ以上マニアックな話になると大体の人は付いて来れないと思うよ」
「じゃ、恵方巻きのルーツって知ってる?」
「知らないけど?」
「聞いた話によると、江戸時代の農民が度重なる年貢の取立てで一向に楽にならない生活の気晴らしをしようと、地主に振舞う太巻きを細工したのが始まりだと言われているんだ。その太巻きは玉子の替わりにからしを、きゅうりの替わりにわさびを、桜でんぶの替わりに七味を入れたりして、何十本の太巻きの中にひとつだけその激辛太巻きを忍ばせておいた。節分の時に地主がそれを食べる反応を見て日頃の鬱憤を晴らしたのが最初だったらしい。恵方巻きという名前も、そんな阿呆みたいな具材を使って作ったから阿呆(あほう)巻きと呼ばれるようになり、それが心の恵みをもたらす巻きものだということで阿呆巻きが訛って恵方巻きになったらしいよ。後日談もあって、明治時代になり鎖国も終わると、この阿呆巻きが海を渡ってロシアにたどり着いた。複数の選択肢の中で一つだけ外れがあるというこの方式はギャング映画なんかで見る拳銃にひとつだけ弾丸を詰めて交互に打ち合うロシアンルーレットの原型にもなったらしいんだ。日本の恵方巻きがロシアンルーレットのルーツなんて凄くない?・・・という嘘が実しやかに流れているから気をつけて!」
「嘘かよ!っていうか、なげーよ!」
「こんなの嘘に決まってるじゃん」
「お前の無駄な話を長々と聞いていた俺の貴重な時間を返せ!」
「怒ってる?」
「怒ってるよ!」
「俺は怒ったぞ!フリーザー!!!みたいな感じ?」
「ドラゴンボールはもういいよ!」
「まぁまぁ、渡る世間に鬼はなしって言うし」
「今のシチュエーションで言うことわざじゃないだろ!」
「そんな鬼の首を取ったような言い方しなくてもいいじゃん」
「それも微妙に使い方が違う!」
「鬼で思い出したけど、みんな人それぞれ理想の鬼像みたいなのあるじゃん?」
「ねーよ!何、理想の恋人像みたいなニュアンスで語ってんの?」
「鬼はファッションもダサいからね」
「ファッションって言っても鬼は金棒に虎柄の腰巻だけでしょ?」
「頭に出っ張ったカチューシャもつけてるじゃん」
「あれは角!」
「金棒は怖すぎるから綿棒にしたらいいと思う」
「弱っ!」
「虎柄もせめて豹柄にすればセクシーなのにね」
「鬼にセクシーさとかいらないだろ」
「もし鬼がセクシーだったら桃太郎にも勝てたかもよ?」
「そんなわけないだろう」
「Club 鬼ヶ島へいらっしゃ~い」
「キャバクラかよ」
「『うふふ、所詮、桃太郎も男よね』とか何とか言って手玉に取れそう」
「豹柄の色気で手玉に取られる桃太郎見たくないわ」
「でも、オカマバーなんだけどね」
「鬼ヶ島っていうお店の名前はぴったりだな」
「体の色もさー、赤鬼は高血圧で怒りっぽそうだし、青鬼はみるからに不健康そうだし」
「完全に色のイメージだけで話してるだろ」
「やっぱり緑色がかっこいいと思うよ。ナメック星人みたいで」
「またドラゴンボールかよ!」
「まぁ、こんな感じが理想の鬼像なんだよね」
「頭には角がなくて、体が緑色で、綿棒を持って、豹柄の腰巻?」
「そうそう、そんな感じ」
「じゃ、お前来週その格好しろよ」
「嫌だよ」
「嫌なんじゃねーかよ!」
「もう来週なんだから俺らの出番は」
「鬼はこの時期大変なのよねー」
「よし、じゃ、豆を撒かれて逃げる練習をするぞ!青鬼よ」
「痛いの嫌だけど人間のために頑張ろうか。赤鬼くん」