「知ってる?総務課の木下って影武者がいるらしいよ?」
「影武者って戦国時代じゃないんだから」
「ホントだって」
「今、21世紀だよ?どこの世界にそんな影武者がいるんだよ」
「だって、フセインにも影武者がいたらしいよ」
「大統領ならともかく、一般人の木下に影武者なんているわけないだろ」
「でも、影武者がいたら便利じゃない?」
「別に一般人は暗殺者に命を狙われる危険とかないし必要ないよ」
「でもほら、会社行きたくない時に、影武者よろしく!とか出来るじゃん」
「それは影武者の仕事じゃないよね」
「あとさ、影武者!そこのTVのリモコン取って!とか」
「完全にパシリ要員だね」
「だめかなぁ?」
「だめとかの前に影武者と自分が一緒に居ちゃまずいよ」
「そっか、じゃ、好きな子を尾行して家を突き止めてとか?」
「それは完全にストーカーだろ!しかも尾行してるのはお前と一緒の顔だから」
「顔がばれるのはまずいね」
「まずいのはストーカー行為の方!」
「あ!そういう時こそグーグルストリートビューか!」
「タイムリーだけど、あれは犯罪に使っちゃ、ダメ、ゼッタイ!」
「あれがあれば影武者はいらないよね」
「影武者の仕事はストーカーじゃないから!」
「でも、影武者って大変だよね」
「まぁ、命を狙われたりするからね」
「時給いくらだろうね?」
「まさか時給換算じゃないだろう」
「求人広告でさ、影武者急募!とか」
「求人広告で募集しちゃうのかよ」
「アットホームな職場で働いてみませんか?」
「アットホームだったら影武者必要ないよね」
「年齢経験不問」
「まぁ、影武者経験のある人はいないからね」
「時給650円」
「危険なのに安っ!これじゃコンビニでバイトするよ」
「役職手当あり」
「シフトリーダーとかあるのか」
「ダンカン、コノヤロー!の物まねのうまい方求む」
「もう、それで全て台無しだよね」
「そうだね」
「誰の影武者を募集してるかわかっちゃうからね」
「じゃ、影武者ってどこで募集してるんだろう?」
「募集とかしてないでしょ。似てる人がいたらスカウトするんじゃないの?」
「原宿とか歩いてたら、ねぇねぇ?君、影武者にならない?って声かけられたり?」
「アイドルのスカウトじゃないんだから」
「スカウトじゃないんなら影武者発掘オーディションかな?」
「だから、アイドルじゃないってば」
「一次審査は書類選考をしてやる気を見たりね」
「影武者募集にそんなにたくさん応募が来るとは思えないけど」
「書類審査が通ったら次は歌唱力審査ね」
「影武者に歌唱力とかいらないから」
「最終審査はお約束の水着審査」
「それって完全に主催者の趣味で影武者の能力に全く関係ないよね」
「あとさ、影武者は体型維持も大変だよね」
「依頼者と同じ体型じゃないといけないからね」
「影でムシャムシャ食べられないね。影武者なのに」
「影武者の名前の由来はそう意味じゃないと思うよ」
「あ、それで思い出したけど、そういえば木下って最近太ったんじゃない?」
「でも、ダイエットしてるって言ってたよ」
「いや、絶対太ってたって」
「もしやそれって・・・!」
「影ムシャだ!」