「またくだらないことばっかりして!」は最高の褒め言葉だと思ってます。
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春風列車に乗って
デジャヴのような春風列車に乗って菜の花畑に行こうよ
電車でじゃなくて列車でだよ
何で列車かって?
列車の方が語呂がいいからに決まってるじゃないか
ミラノ風ドリアとミトコンドリア
どっちの語呂がいいかくらい
普段はカニ歩きしかしない君にもわかるだろう?
天の川みたいに咲き乱れる菜の花畑についたら宙返りするんだ
クルっと一回転したらまた巻き戻し
十歳、二十歳と宙返りするたびに若くなって
ビッグバン辺りまで逆行しようよ
君と僕の距離なんて千年のゆりかごにしまってさ
ほら、もうすぐ緑の季節がツイストのリズムでやってくる
奴らは何にもわかっちゃいないんだ
春の突風にまぎれてショートカットキーが飛んできちゃったり
桜の花びらが散ったらみんなシャガールの絵みたいになっちゃったりすることを
君はタンバリンを叩きながら笑うキリンのような彫刻になりたいかい?
だったら、大波にさらわれる前にお風呂に入って脱穀しなくちゃ
ひらめきが経験を光の速さで追い越すところを見たいだろう?
だからさ、春を溶かしていく炭酸のような雨が降る前に
今度の休みの日にでも菜の花畑に宙返りしに行こうよ
今しか触れられないデジャヴのような春風列車に乗ってさ
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by earll73 | 2009-04-04 00:34 | アレ散文
幸福論
私の幸福は休んでいるのでしょうか。
貴方の幸福は眠っているのでしょうか。
この胸に流れる鼓動が辛辣な波を打つ時でさえ、儚き人々の心、私は知れず。
鏡に映る醜悪な物の怪の正体が何だと言いましょう。
洞窟の暗闇の中を松明も持たずに歩く社会的通念に慣れぬ草臥れ果てた身体。
この自己の欲求に塗れた肉体に宿る精神。
その精神に穢れを感じぬ恐怖を一体誰が笑えると云うのでしょうか。
虚無から誕生する危機的感情が徒党を組んで襲来しては縄抜けの奇術の様に私の中を擦り抜けて往くのです。
その時の私は季節外れの納屋で眠る案山子の様な、或いは役目を終えて地面に転がる抜け殻の様な姿でじっと身を潜め聖者の行進が過ぎ去るのを身悶えながら待っています。
祈ることしか出来ぬ私のこの祈りは一体何処へ届くと云うのでしょうか。
嗚呼、求めるものが多過ぎて、私は石になるしかないのです。
この体が河原に無常に転がる一つの小石ならばどんなに喜ばしいことか。
雨に打たれ日照りに乾き水の流れるままに溺れられたならば。
天に叫びを、地に安らぎを。
誰彼が叫ぶ安価な台詞に閉口する日々の中で自覚した自虐的嫌悪感。
それでも、今朝はカアテンから零れ落ちる朝の光がとても眩しく感じられるのです。
嗚呼、今日も私は此処に生かされていた!
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by earll73 | 2009-03-23 21:44 | アレ散文
安定した日常に溺れていく情熱
世の中は調べ尽され開発し尽され、もう探検をする場所もなく、探検隊などという言葉はもはや歴史の教科書で語られるだけの存在だ。
現世で唯一の素数を探していたはずなのに、穴のあくほど眺めた地図は輪切りにされたトマトの断面図のような残酷な現実を突きつけてくる。
己の純粋さを傷つけまいとハイビスカスの花言葉と共にこの手に掴んだはずの勇敢な物語。
その物語の調べは懐旧の輝かしい青春の煌きを助長して、罪悪感を吸収しながらエロティックに光るステンドグラスに反響するパイプオルガンの音色に似ている。
それらは女の白い肌のように艶かしく、空虚な現実から目を逸らすにはうってつけだ。

安定した日常に溺れていく情熱。

それは時間と空間が交差して劣後する虚像の監獄。
世の中は物語に飢えている。
歓楽街の閉じられたシャッターに描かれている幾何学模様の落書きに芸術性を求めるようになったら世界は終わりだ。

「あなたは切り裂きジャックの正体に気付いていますか?」

「あなたはスカイフィッシュを飼いならしたいと思いますか?」

「あなたは愛と平和について語るトポロジーを持っていますか?」

「そしてそれらは残酷なほど美しい色をしていますか?」

明日は明日の風が吹くという言葉には何の正義も大義もない。
活字と音と精神の洪水に疲弊しきった体を横たえ惰眠を貪れば、深層心理の中だけで生き続ける積み上げられた高尚なる理想。
いつまでも少年の心をなどという幻想に縛られるくらいなら大ほらを吹きながら肥溜めに頭を突っ込む方がマシだ。

安定した日常に溺れていく情熱。

人は嘘をつく。
嘘で固められた歴史に証人はいない。
天才の振りをするのは狂人の振りをするよりも簡単だ。
狂人の振りをするのは白痴の振りをするよりも簡単だ。
対立することで自己の存在の証明してきた自尊心の陰りと比例して、林檎のまる齧りさえも出来ない挑戦者は闘いの鐘を待つこともなく闘技場から姿を消す。

失われた情熱の本質を語れる者がこの世の中に何人居るだろうか。
失った情熱の代償に得たものが安定した日常ならば、トムとハックに何という言い訳するつもりなのだろう。
嗚呼、世の中はこんなに物語に飢えているというのに。
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by earll73 | 2009-02-11 00:00 | アレ散文
お帰りマーチ
夕焼け小焼けで日が暮れて
良い子はお家にお帰り電撃的に
マッチに火がつかないからおでこにばんそうこうを貼ろう
これでもう飼いナマズに吠えられて家に帰れないなんてことはないはずさ
どこからか太鼓の音が聞こえてくるよ
火曜日の夜はいつもドラマチックバイオレンスだもの
歩道橋の上にはほら、青い風船爆弾
その風船に吊らされてるのは色のついた石鹸ばかり
卑劣なボトル式ボディーソープ集団に見つからないように帰らなきゃ
まさにバイオレンス
商店街へと抜ける大通りにはしましまの横断歩道があるよ
おばあちゃんが言ってたっけ、しましまの人には気を付けなさいって
だーかーらー、息を殺してずんずん歩け
寸胴持ってずんずん歩け
中身は去年の冬に積もった雪がスクラム組んで頑張っているのさ
商店街を3つほど越えたところの人見知り公園はみんな人見知りになっちゃうよ
そこでだんごむしのように体を丸めながらおせんべいを配るおじさんとすれ違ったら
それは何ともドラマチック
でも、知らない人からもらったものは食べてはいけません
公園のゴミ箱も悲しくなるから見てはいけません
十字路をたい焼きの方向に曲がれば活火山
のどもと過ぎれば川べり歩いて湿地帯
今日の夕食はなんだろう
悩める乙女のように煮込みハンバーグをたらふく食べたいな
もうすぐお家に着きそうだけど、おでこのばんそうこうがかゆくてかゆくて
でも、そのばんそうこうを剥がすとそこにもまたばんそうこうが貼ってあるのさ
3つ目じゃないよ4つ目だよ
僕らボラン星人は
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by earll73 | 2008-08-26 00:00 | アレ散文
コテンパンサラダのレシピ
さて、今日は誰でも簡単に作れるコテンパンサラダを作ってみましょう。
最初に下準備をします。
まず海外旅行に行く妄想してください。
そうですね、国はトルコライスのやや左辺りがよいでしょう。
そうです、そうです。スパゲッティの左端辺りがグッドです。
そして、飛行機に乗ったら乱気流に巻き込まれた状況を想像して下さい。
はい、いろいろな意味での揺れる想いをサラダ中に感じましょう。
機長の「もうダメだ!」という叫びや、神に祈りを捧げる初老の外国人など、混乱する機内での妄想を一通り巡らせます。
それが終わったら脳内で無事に飛行機を着陸させてください。
危機的状況を乗り切ったので、降機の際には他の乗客と笑顔でハイタッチをするのがポイントです。
乱気流はハイジャックでも代替可能です。
ハイジャックの場合は犯人に覆面をするのを忘れないように!
(覆面があるかないかでサラダの味も変わってきます)
揺れる想いを感じても、このままずっと妄想の中にいてはダメです。
現実を見ましょう。
はい、現実を見ると何も出来ていませんね。
これで下準備は終了です。
次に大根を手刀で切ります。
刃物を使うと野菜の繊維が傷みやすいので野菜はなるべく手で切るようにしましょう。
出来ない場合は念力で切りましょう。
レタスは「んばらー、んばらー」と地団駄を踏みながら引きちぎります。
よく野菜の繊維がどうとか細かいことを言う人もいますが、そんな人のことは気にしないでいいです。
料理は愛情、世は無常、好きな漫画は明日のジョーです。(中国の古いことわざ)
トマトはよく洗って、手で10回ジャグリング、もしくは足で10回リフティングをしてからのほうが甘みと俺は何をやっているんだろう感がよりいっそう引き立ちます。
後は好きな野菜をお好みで入れやがれ!このコケコッコー野郎が!
トサカマグナム!ずっきゅん!
うわー、やーらーれーたー!
・・・。
あ、いや、今の一人芝居は特に意味はありません。やってみたかっただけです。
はい、気を取り直して、全ての野菜を切り終えたらボウルにいれます。
ボウルに入れた野菜をそりゃもうコテンパンにします。
借金取りの執拗なる嫌がらせで自分と母親を残して夜逃げをしてしまった父親への憎しみと、でも実は心の奥ではいつか帰ってきてくれると信じて生きてきたその葛藤と苦しみを、10数年振りに偶然街で再会してしまったその父親にやり場のない怒りと悲しみを発散するかのようにコテンパンにしてください。 (息継ぎ禁止)
もしくは、赤パジャマ黄パジャマ茶パジャマの早口言葉を3回目の茶パジャマを最後の最後で茶まじゃまといい間違えて罰ゲームでバンジージャンプをさせられるくらいコテンパンにしてください。
さらには、パン屋で「コテンパン下さい!」とふざけて言ってみたところ、真面目な顔でコッペパンを出されてしまった時の悲しみくらいコテンパンにしてください。
このように様々な方法で本能のままギッタンギッタンのバッタンバッタンのベッコンベッコンにします。
コテンパンにし終えたら「ヒャッホゥー!」と(ミッキー+マリオ)/2のような甲高い裏声で叫んでください。
それから家にある食器という食器をフリスビーのように投げてみましょう。
食器の割れる音が少なくとも30分間は途切れないようにしてください。
お隣から110番されたらコテンパンサラダの出来上がりです☆
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by earll73 | 2008-08-08 00:00 | アレ散文
影武者
「知ってる?総務課の木下って影武者がいるらしいよ?」

「影武者って戦国時代じゃないんだから」

「ホントだって」

「今、21世紀だよ?どこの世界にそんな影武者がいるんだよ」

「だって、フセインにも影武者がいたらしいよ」

「大統領ならともかく、一般人の木下に影武者なんているわけないだろ」

「でも、影武者がいたら便利じゃない?」

「別に一般人は暗殺者に命を狙われる危険とかないし必要ないよ」

「でもほら、会社行きたくない時に、影武者よろしく!とか出来るじゃん」

「それは影武者の仕事じゃないよね」

「あとさ、影武者!そこのTVのリモコン取って!とか」

「完全にパシリ要員だね」

「だめかなぁ?」

「だめとかの前に影武者と自分が一緒に居ちゃまずいよ」

「そっか、じゃ、好きな子を尾行して家を突き止めてとか?」

「それは完全にストーカーだろ!しかも尾行してるのはお前と一緒の顔だから」

「顔がばれるのはまずいね」

「まずいのはストーカー行為の方!」

「あ!そういう時こそグーグルストリートビューか!」

「タイムリーだけど、あれは犯罪に使っちゃ、ダメ、ゼッタイ!」

「あれがあれば影武者はいらないよね」

「影武者の仕事はストーカーじゃないから!」

「でも、影武者って大変だよね」

「まぁ、命を狙われたりするからね」

「時給いくらだろうね?」

「まさか時給換算じゃないだろう」

「求人広告でさ、影武者急募!とか」

「求人広告で募集しちゃうのかよ」

「アットホームな職場で働いてみませんか?」

「アットホームだったら影武者必要ないよね」

「年齢経験不問」

「まぁ、影武者経験のある人はいないからね」

「時給650円」

「危険なのに安っ!これじゃコンビニでバイトするよ」

「役職手当あり」

「シフトリーダーとかあるのか」

「ダンカン、コノヤロー!の物まねのうまい方求む」

「もう、それで全て台無しだよね」

「そうだね」

「誰の影武者を募集してるかわかっちゃうからね」

「じゃ、影武者ってどこで募集してるんだろう?」

「募集とかしてないでしょ。似てる人がいたらスカウトするんじゃないの?」

「原宿とか歩いてたら、ねぇねぇ?君、影武者にならない?って声かけられたり?」

「アイドルのスカウトじゃないんだから」

「スカウトじゃないんなら影武者発掘オーディションかな?」

「だから、アイドルじゃないってば」

「一次審査は書類選考をしてやる気を見たりね」

「影武者募集にそんなにたくさん応募が来るとは思えないけど」

「書類審査が通ったら次は歌唱力審査ね」

「影武者に歌唱力とかいらないから」

「最終審査はお約束の水着審査」

「それって完全に主催者の趣味で影武者の能力に全く関係ないよね」

「あとさ、影武者は体型維持も大変だよね」

「依頼者と同じ体型じゃないといけないからね」

「影でムシャムシャ食べられないね。影武者なのに」

「影武者の名前の由来はそう意味じゃないと思うよ」

「あ、それで思い出したけど、そういえば木下って最近太ったんじゃない?」

「でも、ダイエットしてるって言ってたよ」

「いや、絶対太ってたって」

「もしやそれって・・・!」

「影ムシャだ!」
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by earll73 | 2008-08-07 23:16 | 雑文
唐突な神様
朝のスクランブル交差点を歩いていると突然目の前に神様が現れた。
「君のスペックはいくつかね?」
八百屋で大根の値段を尋ねるかのような口調で神様が問いかけてきた。
「えーと、A4より少し小さいくらいです」
相手が神様なら仕方ない。
通勤時間なので急いでいたのだけど正直に答えた。
「そうかそうか、それにしても今日はバナナ日和じゃのう」
神様は僕の答えなんてまるで興味無さそうにそう言った。
「そうですね。こんな雲ひとつない天気の日にはバナナが良く似合います」
僕がそう答えると神様は駄々をこねる子供のように手足をバタバタさせて、「そんなのはテレビっ子の発言じゃぞ。以後気をつけるように」と口調を荒げた。
よくわからないまま怒られて呆気に取られている僕を尻目に、神様は組み体操の扇の右端のポーズを取っている。
「それじゃ、ワシはもう帰る」
いきなり神様はそう言い出すと、シャンパンのコルクを抜くような「ポン!」という音がして、耳が通常の2倍はありそうな象が目の前に現れた。
神様は象の鼻を伝ってひょいと背中にまたがると「ハイヨー」というかけ声をあげてその象を動かし始めた。
あの大きな耳を羽ばたかせて飛んで行くのかなと、一瞬期待したけれど、象はそのまま地面に垂れた大きな耳を引きずりながらのそのそと道路を歩いていくだけだった。
「その象に乗ってどのくらい行くのですか?」と聞くと、神様は僕の質問に少し困ったような顔をして「3日くらいじゃよ」と所在無さげに答えた。
次に「3日も象に乗ってどこまで行くのですか?」と聞こうとしたけれど、腕時計を見ると会社に遅刻してしまいそうだったのでやめた。
信号がぱちくりとまばたきを始めたので、急いで交差点を渡り、後ろを振り返ってみると、さっきまで象の背中に乗っていた神様はもういなかった。
象は信号のまばたきなど気にせずに、相変わらず交差点の真ん中を大きな耳を引きずりながらのそのそと歩いていた。
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by earll73 | 2008-05-28 01:37 | アレ散文
浜辺の桜が咲く頃に
満開の桜が散り始める季節にこの浜辺に立つと、思い出されるのは隊に所属していたあの頃のこと。
「右向け左!」
教官の雄叫びのような号令が桜満開の砂浜に響く。
僕以外の隊員は2進数の0と1のようにひとつの例外もなく号令通りに動く。
「こら、貴様、そっちは四次元だろ!」
入隊してから3年も経つのに、僕だけがまだその号令に慣れずにいていつも教官に怒鳴られていた。
その度に左手に持たされている1/4カットのキャベツが「ケケケ」と笑う。
晴れ時々夢気分のような天気の日でもこの季節の海風はまだ冷たい。
そんな海風は僕が失敗する度に、砂浜に散った花びらを巻き込んで火照った頬をやさしく包んでくれた。
僕らの隊の教官は牛山田さんと言って、頭に角があったり、鼻輪をしていたりと、誰もが思い浮かべる典型的な「牛山田」のイメージ通りの人だった。
怒るととても怖かったけれど、ポップコーンが大好きな人で、ひと時もポップコーンの菓子袋を手放さなかった。
その割にはポップコーンという単語がうまく発音出来ずにいつもポッコーン、ポッコーンと言っていたのが可笑しかった。
「俺はポッコーンと共に生き、ポッコーンと共に死ぬ」
かっこいい台詞を言っているようだけど「ポッコーン」では何だか締まらない。
教官にはよく怒られていたけれど、不思議と嫌いではなかった。

その牛山田教官が最近亡くなったのだと読みかけの文庫本のあとがきで知った。
死因は分からない。
けれどあの人のことだから自分の信念に基づいて「ポッコーン」と共に死んでいったのだと思う。
自分の信念に基づいて死んでいった男の魂を誰が笑えるだろうか。

桜の木の下に腰を下ろし、さっき売店で買ったポップコーンの袋を荒っぽく開けてやみくもに頬張る。
ちょっと味が濃いように感じたけれど、きっとそれは塩味のせいだけじゃない気がする。
視線を海に移すと、沖のほうに停泊している漁船から紫の煙が出ているのが見える。
きっとギターでも弾いているのだろう。
いつの間にか僕の隣に三匹のこぶたが座ってミャーミャー鳴いている。
きび団子を与えるかのようにこぶた達にポップコーンをあげると、残りは右手にひと掴みし、海の青さよりもだいぶ淡い色をした空に撒いた。
さざ波の音と共に強い春風が吹いて桜の枝から花びらを奪っていく。
その風に乗ってポップコーンも空に舞い上がる。
舞い上がったポップコーンは雲ひとつない空にある文字を浮かび上がらせた。
それは教官から出来の悪い教え子への最後のメッセージだったのかもしれない。

「ハニラ」

空に描かれた文字の意味は全く分からない。
もしかしたらその文字はハニラではなくハニワだったのかも、バニラだったのかもしれない。
どちらにしろ意味は分からないけれど。
目線を空から水平線に落とすと、砂浜は緑一面のキャベツ畑に変わっていた。
空に舞ったポップコーンはモンシロチョウになり、ひらひらと優雅に羽根を羽ばたかせている。
そうか、どうやら僕はあの頃からずっと四次元の方を向いたままだったのか。
ハニラの答えはわからなかったけれど、教官の「右向け左!」の声はいつまでもこの浜辺に残ったまま僕が来るのを待っていたのだ。
また力強く儚い春の風が吹いて桜の花びらが辺り一面に舞い上がる。
その桜吹雪のぼんやりとした視界の先には、新緑の季節が今まさに飛び出そうと、スタートテープを切ろうとしていていた。
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by earll73 | 2008-04-05 00:16 | アレ散文
まるで氷河期、この唇に
夜空は何も混じり気のない様子でひんやりと静かに息づく。
空は墨汁を染み込ませたような不気味な暗さでこの世界を支配していた。
夜半から雪が降るかもしれないという予報は外れたようで、しなやかに揺れる高層ビルの隙間から顔を出した真っ白な月は、黒曜色の空を波打つようにたなびいている。
星の見えない空に吹く風はとても厳しく、季節外れの天の川をも全て吹き飛ばしてしまった。
凍てつく北の空にだけ、丸みを帯びた月が我がもの顔で飄々と輝いていた。
一方、繁華街の表通りでは八方美人なネオンサインの瞬きと共に人々の欲望が枯れる。
そこには全ての欲望が叶うかのような幻想と誘惑と歓喜の声がとぐろを巻いて人々を縛っていた。
その欲望通りから横道に逸れた静かな路地裏に一歩足を踏み入れると、誰かが捨てたやさしさが野良になって足元に懐く。
それは何かの理由になるわけでもなく、誰かの答えになる事もなく、ただ純粋にその命とも言えぬわびさびを燃やし続けているだけのようだった。
路上には路上の掟がある。
触れてはいけない、手を出してはいけないと思いつつも、その野良を拾い上げる。
群青色の手袋からかじかむ手を出し触れたその刹那、張り詰めていた裏通りの静寂は、ぼんやりとした言いようのない不安に一瞬にして切り裂かれたのだった。
量りきれない衝動がこの街を駆け抜けて行く。
それは心の奥に仕舞いこんでいた何年間も開けていない宝石箱から解き放たれた、いくつもの無垢な思い出たちが全てこぼれ落ちて行ってしまうかのようだった。
路地裏に差し込む桃色や紫色したネオンサインの逆光によって打ち破られた淡く切ない思い出たち。
それは水面にこぼれ落ちた雫の環が永遠に広がり続けるように路地裏から表通りに向かって広がり続けていく。
だが、その事に表通りの人々は誰も気付かない。
地下鉄のホームに迷いこんだ鼠だけはいち早くそれを察知して、足早にこの街を離れていく。
いや、皆、気付いていたのかもしれない。
その衝動が闇夜を駆け抜けても、夜の絶対的支配者さえもこの街の掟を破ることは出来ないということに。
そして、街外れから吹く冷たい郷愁の風が人々のマフラーを揺らした数だけ、その反動でこの街は萎びて行くということにも。
街角のブルースバーから微かに聴こえるハウリン・ウルフのブルースがこの街の唯一の救いだった。
あれだけ堂々と輝いていた月が満月から三日月、そして角のある円を描く時間帯になると、街はまるで氷河期のように色のない世界に変わっていく。
夜の街が片付けられる頃、夜の支配者は影も音も足跡さえないまま架空の始発列車に乗り込む。
乾いた唇にそっと人差し指を当てて、いくつもの時代を振り返り遡りながら、次の街へ夜の闇を運びに行くのだった。
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by earll73 | 2008-03-04 00:03 | アレ散文
冥王星
馴染みのバーに入ると取り合えず冥王星をオーダーした
この季節の冥王星は格別で質量保存の法則の比ではないのだ
それだけを楽しみに毎日フレキシブルな生活をしているのに
テーブルに運ばれてきたのは蟻の巣だった
しかしマスターはこれは冥王星だと言う                  
しかしどう見ても蟻の巣だ
騙されたと思って巣の中に入ってみなよとマスターは言う
騙されたと思って入ってみた

中に入るとそれは確かに冥王星だった
まどろんだ環状線を綱渡りしている流氷や
溢れ出すぶどう糖の遍く大行進や
小高い丘から見える虹のふりしたハーモニーたち
それはどこからどう見ても冥王星だった

それじゃ、何か一品作りましょうかとマスターは言うと
玉子を割るように僕が入った冥王星をテーブルの角にコツンとぶつけ
ボウルに冥王星の中身を入れた
それから塩と胡椒とかくし味に少しねっとりとしたものを入れ
ぐちゃぐちゃにかき混ぜてからまた元のような球体にした
僕は冥王星の中に入ったまま世界が揺れたりさかさまになったり
朝やら夜やらが踊ったり泣いたりしているのを見ていたのだけど
ワンツースリーときっちり61秒数えていると
何だかボタンを掛け違えたみたいな気持ちになった

それでも、結局出来たのはまた冥王星で
次のお客が冥王星をオーダーした時にそれは振舞われるのだ
「マスター、いつもの冥王星を一つ」
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by earll73 | 2008-01-14 03:14 | アレ散文