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「またくだらないことばっかりして!」は最高の褒め言葉だと思ってます。
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季節の終わり
「線香花火ってどうしてこんなに切ないんだろう。」
君の問いに僕は答えられなかった。
僕は無言のまま、もう枯れて灰になってしまった線香花火の亡き骸をずっと見つめていた。
「線香花火が切ないのは花火が終わってしまうからじゃないんだ。
花火が終わったら君と離れなければならないから切ないんだ。」
結局その言葉は僕の口から出ることはなかった。
口に出してしまうとその瞬間に今が風化してしまいそうで、この一枚の水彩画のような鮮やかな刹那を永遠にこの季節に閉じ込めておくにはそうするしかなかった。
ぼんやりとした景色の中で、走馬灯のように巡りめぐる小麦色の季節の出来事。
たった今、瞼の裏に焼きつかせた線香花火のきらめきでさえ、もう随分と過去のことのように思えた。

僕にはこのはしゃぎすぎた季節の出来事を整理する作業が必要だった。
それはきっと君も同じだったのだろう。
いつもは口数の多い君も、この時ばかりはぼんやりと何か考え事をしているように見えた。
火薬の匂いの残る空気が僕らをやさしく包み込み、二人の間に訪れた穏やかな沈黙がこの季節の全て出来事を鮮やかに甦らせる。

ふと見上げた夜空には、白く淡い輝きを放つ満月が顔を出していた。
それは線香花火の儚い美しさとはまた違った、剛の美しさを感じさせる月だった。
そんな月明かりの中で見た君の横顔は線香花火よりもこの満月よりも美しく見えた。
その時僕は美というものは決して一つの形容詞なんかでは語れないのだということに初めて気が付いたのだった。

「夏、終わっちゃうね。」

じっと横顔を見つめる僕の視線に気付いてか、先に口を開いたのは君の方だった。

「そうだね。」

二人の会話はそれだけで十分だった。
夏の物語にはそんな力があったのだと思う。

ふんわりとした夏のぬけがらのような生ぬるい風が僕らの間を横切る。
それはたくさんの秘密を分け合った季節の終わりを告げる風だった。



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TB記事 http://earll73.exblog.jp/2211266

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by earll73 | 2005-08-31 12:59 | TB参加
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